旅する理由

 ――われひとりただひたすらに歩きをり行く場所しらずただ月照れり――啓――


人はなぜ旅をするのでしょう? 知らないところに行く不安と期待、何度か訪れて約束された楽しみに会いに行く喜びをなどいろいろの楽しみや喜びがあると思います。

つきつめれば楽しみ、そして自分を俯瞰して新しい一面を見つけることだと思います。そのことを話したいと思います。


まず単純な楽しみと言うことです。物語が好きな私はその物語の関係するところを旅するのが好きで、尊敬する小説家の泉鏡花の生まれ故郷である金沢は、鏡花の生まれ故郷らしく闇を含んだきらびやかさを感じる街並みや、加賀百万石の城下町であったなごりの華やかさが感じられる旅でした。

少年鏡花が歩いただろう、そしてあやしくて、この上なく美しく怖い『化鳥(けちょう)』の舞台となった浅野川のほとりを歩く喜びは数年たった今でも覚えています。

夕方の浅野川、美しくも少し悲しげです


そして自分を俯瞰して、自分の知らなかった自分の一面を見つけることは、旅をすれば必ず知らないことに出会います。そのときに困惑する自分、それを楽しむ自分がいることに気が付き「ああ、不安を楽しむこともできるのだなあ」と発見するのです。

奈良などの古寺に行き曼荼羅や阿弥陀如来来迎図などを拝んでいると、いつのまにか子供の頃に仲の良かった従姉妹たちの顔が浮かんできたりして、ノスタルジックな一面があるのだと教えてくれます。

當麻寺。中将姫が一晩で織り上げたといわれる
曼荼羅があります。


もちろんそのほかにも土地土地のおいしい食べ物や温泉、風光明媚な景色など言い出したらきりがないですよね!

奈良県、當麻寺ちかくの中将堂本舗
ぜんざいです。塩こぶと草餅のぜんざい、
たまらんです。

コロナも次の局面になり、旅も行けるようになってきました。時間をつくり、旅に行き、自分を楽しませようではありませんか。



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